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現代でもないパラレル。(何
ガンダムのない西暦2300年と思っていただければ。

一応ニル刹♀(29×21)。(一応…?

書き上げたらR12でした。(…



 *****







忘れられない人がいます。



褐色の肌の女




仕事が終わって一眠りしようかと家路に着いていた。
肩に担いだ「仕事道具」がやけに重たく感じた。
時刻はもう午前零時を回っている。
街も静かだ。
夜のひんやりとした空気が、高揚した身体の熱を抑えるのにちょうどよかった。
「仕事」の後はいつも身体が熱を持った。
神経を最大限に研ぎ澄ませるからかもしれない。
さっさと家に帰ってシャワーを浴びて熱を発散させようと、そう思っていた時だ。

少し離れた路地裏から、複数の男の声が聞こえた。
話の内容に耳を傾ければ、どうやら女を囲っているらしい。
薄汚い笑い声が、どことなく不愉快だった。

路地裏を覗けば、思ったとおり、3、4人の男が女性を囲っていた。
女性の服装は独特だった。
所謂、民族衣装というやつ。
そんな格好でこの辺りをうろついていれば誰だって引っかかるだろう。
深々とフードを被っているせいで、顔はよく見えなかった。
少し呆れて、ため息を吐いた。
だがこれで見過ごせる性質でもなかったから、歩を進めた。

「悪い悪い、その子俺の連れなんだ」
「なんだぁ兄ちゃん。横取りしようっていうのかよ」
「違うって。待ち合わせしてたんだけど、見失っちまって。悪かったな」
「下手な嘘吐くんじゃねぇよ。俺等の獲物だ。さっさと消えな兄ちゃん」

あぁ、面倒だ。
大人しく引いてくれればいいのに。

「痛い目見たくないだろ?」
「調子乗るんじゃねぇよ。てめぇ一人で何が出来るってんだ」
「んー、そーだなー」

ホルスターに収めていた銃を素早く引き抜き、一人の額にびたりと押し付ける。
男達は何が起きたのか全く理解出来ていないようだ。

「…っな…!」
「脳天に穴空けること出来るかな」

ぐ、と引き金にかける指に力を込める。
額に銃口を押し付けられた男から、脂汗が吹き出ていた。

「おいコイツ本気だ!さっさと逃げるぞ!」

そう言って、脱兎のごとく、男達は逃げ出した。

呆気ないな、と思いながら一つため息を吐いて、ホルスターに拳銃を仕舞う。

「あー、怪我、なかったか?」

囲まれていた女性に声を掛ける。
彼女は深々と被っていたフードを外し、その顔を晒した。

漆黒の、少しくせのある髪。
浅黒い褐色の肌。
飾り気が全くない上に少し幼さの残る、でも、端整な顔立ち。

そして何より、曇りのない、力強い赤褐色の眼。

一瞬、目を奪われた。
綺麗、とも違う。美しい、とも違う。
言葉で表現するには難しすぎた。
路地裏に射す月明かりのせいで、誇張されているだけかもしれなかった。
けれどその纏う空気に、息を呑んだのは間違いなかった。



礼だ、と言われて近くにあった店に入った。
カウンター席に腰掛け、とりあえずウィスキーを頼む。何か飲みたい気分だった。
彼女はどうやら酒が飲めないらしかった。
それなら、ということで、彼女用にマスターにミルクを頼んだ。


「お前さん、中東の人間だろ?何でアイルランドにいるんだ?」
「…人を、探している」
「人?」
「姉だ。小さい頃に離れ離れになってしまった」
「…もしかして、世界中回ってんのか?」

俺の問いに、こくりと小さく彼女が頷いた。

「中東の人間にしては色の白い、青い瞳の持ち主なんだが…。アンタ、裏稼業の人間だろう?何か知らないか?」
「いやわかんねぇな…って、え?」

彼女の言葉に引っかかりを覚え、思わず目を見張る。

「俺、言ったか?裏稼業とかって…」

内容が内容なだけに、仕事のことを他人にあまり話さないようにしている。
そうでなくてもほんの少し前に出会ったばかりの彼女が、俺の素性を何か知っているとは思えなかった。
確かに仕事道具は今足元だ。けれど、ケースだけで中身がわかるとも思えない。

「言ってはいない。だがわかる。スナイパー、だろう?アンタ」
「何で…」
「匂い、硝煙の。それに、さっきの動きでも、わかる」

驚いた。
幾ら今日、しかも数刻前に「仕事」を終えたばかりとは言え、匂いには充分気を遣っているつもりだった。
それを、嗅ぎ当てるなんて。
加えて、「さっきの動き」だなんて。
俺はホルスターから銃を出して男の額に押し当てただけだ。
確かに牽制の為に少しばかり動きは早めたけれど。

彼女を凝視していると、くすり、と小さく笑った。
その微笑みが、なんだか妖艶でどきりとした。
無表情ばかり見ていたせいで、そんな表情も出来るのかと思ってしまう。

「おかしいか?」
「あ…いや、まぁ…驚きは、したけど…」
「生き延びる為に色々学んだからな。その程度のことはわかる」

気分を悪くさせたらすまない、と彼女は謝ってきた。
驚きはしたけれど、不思議と嫌な気分はしなかった。
普段なら関わらないようにとさっさと逃げるくせに。
それも彼女のせいなのだろうかと、おぼろげに思った。

グラスをぼんやり見つめる彼女の横顔は美しかった。
持っているのはどこにでもあるミルクなのに、何か特別な飲み物のような気さえした。



どういう経緯でそうなったかとか、よく覚えていない。
(酒と高揚した気分のせいにしている)

気付いたら彼女を自分の家に招き、そうして、抱いた。


本当に、酒とその時の気分のせいだったのかもしれない。
彼女の身体はひどく魅力的に感じた。

旅を続けているせいか所々に傷が見られたが、それでも瑞々しく肌理細やかな肌は吸い付くようだった。
胸は少し小ぶりだったけれど、形はとても整っていて、顔を埋めると安心感すら生まれた。
小さく上げる嬌声は、どこか我慢しているような印象すら受けて、俺の中にあるサディスティックな感情を引き出すには充分すぎた。
生理的な涙で潤んだ赤褐色の瞳を、食べてしまいたいとすら思った。

愛しい、とは違う。
恋しい、とも違う。

とにかく、彼女の全てを求めて止まなかった。
狂おしい、というのは、こういうことかもしれなかった。



「仕事」の後に見る夢はいつも決まって悪かったのに、その日だけは違った。
空っぽになったココロが、色んなもので満たされる感覚で浸っていた。





翌日、目を覚ましたとき、彼女はもうどこにもいなかった。

ベッドにすら彼女の温もりがなくて、一瞬、夢だったのかと思ってしまった。
だがベッドサイドに置かれた小さなメモが、その考えを否定した。


『貴方に、祝福の多からんことを』

あまり綺麗な字では書かれていなかった。
けれど、そのいびつさが彼女らしくも思えた。





名前すら聞かなかった彼女のことを、時々思い出す。
思い出しては、彼女を想って目を瞑る。

そうすると少しだけ、悪い夢が穏やかなものに変わる。



どんなに月日を重ねてどんなに他の女を抱いても、彼女のことだけは、忘れることがなかった。




09.07.08

title by=テオ



―――――――――
お題を見た時に思いついた話です。
せっちゃんを不思議系にしたかった。せっちゃんのお姉さんはマリナ様という設定。(なんとどうでもいい…
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