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書けるうちにさくっと書いてしまおう、ということでさっそく続き。
刹ニル♀。

どこの少女マンガだ、と思いながら書きました。笑。




 *****









たまには、本音をぶちまけてもいいですか?



平気だよ、と目元を赤くして-2-



悪いことは重なるものだ。
通された部屋は、刹那たちのグループと隣り合わせだった。
襖で区切って個室になる程度のものだから、襖を背に座れば、隣の声が丸聞こえだ。

スメラギがとりあえず、とばかりに生ビールをジョッキで注文した。
ざわざわと話し声が雑音になって店内をにぎやかにしている。
けれどニールは、その空間の中でただ一人上の空だった。

どう思っただろうか。
あんな風に会社の上司に肩を抱かれる自分を見て。
自分を見たあの視線も、逸らされた顔も、全部、頭に焼き付いて離れてくれない。

隣で座る上司の乾杯の音頭に合わせてなんとかグラスを持った手を挙げた。


襖で区切られた隣の音ばかりが気になる。
刹那は今、何をしているだろう。
どんな表情でいるだろう。
彼の周りにいる女の子たちは、どんな子なのだろう。

そう思っていたら、彼の名前が女子二人の会話の中で上がったのがわかった。

「ねぇ、刹那って結構かっこいいよね」
「わかる!なんていうか、無口で何考えてるかわかんないけど、そこがいいんだよね」

胸がもやもやする。
勝手に、刹那の話をするな、なんて思ってしまう。

「彼女とかいるのかなー」
「どうなんだろ?いなかったら狙ってみちゃう?」

いやだ。いやだいやだ。
取らないで。
俺のものだ。
取って、しまわないで。


「駄目だ!!」


気持ちが爆発したみたいに、気付いたら、そう叫んでいた。
周りが途端にしんと静まり返る。
ニールの同僚達は、皆、ぽかんとした目で彼女を見た。
隣の部屋の声もしなくなったから、相当響いたのだろう。

「…ニール、どうかした?」

スメラギがそう声を掛ける。
だがニールはしばらく何も答えなかった。

あぁもういい。
こうなればヤケだ。
気を失うまで飲んでやる。

そう思って、目の前にあった自分のグラスの中身を一気に飲み干した。
全員、そんな彼女の様子を見て歓声を上げる。
スメラギだけが戸惑ったような表情をしていた。

「おかわり!」

そう言えば、誰ともなくジョッキに入ったビールを注いでくれた。
それをまた一気に身体に流し込む。

考えたくなかった。
会えなくなった恋人のことも、流れた約束のことも、隣で座るうざったい上司のことも、襖の向こうで恋人のことを話す若い女の子のことも、自分の年齢も。
何もかも頭から飛ばしたかった。
こんなの馬鹿みたいだ。
年下の恋人に恋焦がれて、やきもきして。
でも本音を言ってしまえば絶対に後悔して。

ぐるぐるぐるぐる。
胸のもやもやが、ずっと身体の中を巡っているみたいだった。


「時にニール君。君は年下の恋人がいると風の噂で聞いたのだがね」

生ビールを数杯飲んだ頃に、グラハムにそう声を掛けられる。
なかなか酔いの回ったニールは、若干思考が追いつかなかった。

「その彼とは上手く行っているのかい?
もし自由奔放な子どもに振り回されているようなら、私がいつでも相談に乗るよ」

グラハムがまたニールの肩に手を置く。
振りほどこうという気にもなれない。

「……別に、相談、なんて…」

その時だ。
ガラっと音を立てて、ニールの後ろの襖が開いた。
ざわ、と周りの同僚がその場の空気を変えた。

肩に置かれた手が振り落とされる。
代わりに、腕を掴まれた。

「帰るぞ、ニール」
「せ、つな…?」

ニールの腕を掴んだまま、彼女の荷物や上着を持つ。
ぐい、と腕を引かれ、もたつきながらも立たせられた。
周りが何が起きているのかわからない、という目が自分達に向けられているのがわかったが、ニール自身も何が起きているか理解が追いつかなくて、どうも対処出来ずにいた。
結局、そのやり場のない空気を置き去りにしたまま、刹那はニールに手を引かれて店を後にした。





繁華街を抜けてしばらく歩いて、公園に辿り着く。
そこでようやく椅子に腰を下ろし、一息吐いた。

「またずいぶんと飲んだな」

言われ、うっと口ごもる。
だってまさかこんな状況になるなんて思わなかったのだ。
だから、ヤケになって力の限り飲んでしまった。
絶対、酒臭い。

視線を合わせられずに下を向いていると、刹那がニールの前髪に触れた。
その仕種に、思わず顔を上げる。


「あんまり、我慢なんてするな」

その言葉に、ニールの瞳が揺れた。

「我慢されすぎると、逆に相手にされなくなったのかと思う。大人ぶるな。
ただでさえ、こちらの方が子どもなのだから」

あぁどうしよう。全部、バレバレだ。
言ってしまいたい。
全部、ぶちまけたい。

ぎゅ、と刹那の服の裾を握った。


「ホントは、会いたかった…」
「あぁ」
「飲み会なんか、行ってほしくなかった…」
「あぁ」
「でも、友達大切にしてほしいのも、本音…」
「あぁ、ありがとう」
「でも、やっぱり会いたかった…」
「だから言っただろう。早めに帰ると。それをお前が勝手に電話を切ったんだ」
「…うぅ…」

ぽろぽろぽろぽろ。
涙が溢れて止まらなかった。
胸がいっぱいで、言いたいことは沢山あるのに、言葉にならなかった。

「店の入り口のあれ…絶対誤解だからな…」
「別に気にしてない。ただあの男には腹が立った」
「…ただの上司だからな…」
「わかっている」

刹那の肩に頭を預けた。
ほんのりと、いつもの刹那からする香りじゃないものが香って、少しだけ胸がざわついた。

「…刹那が、若い子に取られる気がして嫌だった…。ていうか、いっつも不安…」
「ないぞ、絶対」

「……すき…」
「あぁ」
「大好き。刹那が、ほんとに好きなんだ」
「俺もだ」
「…せつなぁ…」

あぁなんと情けないことか。
三十路直前の女が、夜の公園で年下の恋人に愛の告白だ。


けれど抱きしめてくれる腕は、やっぱり何よりも安心出来るものだった。






たまには本音を言ってもいいですよね?

(君を誰にも渡したくないんです!)





――――――
どこの少女マンガ…。苦笑。
ニールさんが別人格になってて焦りながら書いた。(…
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