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この間上げた、「楽園TV」設定の続きというか、シリーズ。
またもやせっちゃん一ミリも出てきません。←

今回は、ニル→刹と、アニューさん。
時系的には刹那がまだ戻ってきてない頃。






 *****





優しさと裏切りと迷子





「お茶のお代わりいかがですか、ニールさん」

凛とした声にそう問われ、顔を上げる。
ライルの想い人は、にこやかに微笑んでティーポットを手にしていた。

気付けば、持っていたカップの中身は完全に冷め切っていた。
あぁしまった。
完全に、自分の世界に入っていた。

ぐい、と冷めて渋みの強くなってしまった紅茶を飲み干して、アニューにお代わりを頼んだ。
彼女がお茶を注いでくれている間に、ちらりと横目でテレビの画面を見やる。

ELSの侵略が終わり、世界は落ち着きを取り戻しつつあった。
下界の様子を見せるテレビは、比較的穏やかな世界を映し出す。

大事なことに、気付こうともせずに
たった独りで宇宙の彼方に行った存在など、ないかのように



「はい、どうぞ」

ことり、と目の前に温かな紅茶が注がれたカップが置かれる。
湯気が立った淹れ立ての紅茶は、何故か虚しさが増した。

「なぁ…君は、刹那を恨んでないのか?」

突然の問いに、いつも冷静な彼女もさすがに目を丸めていた。
だがしばらくすると、また穏やかな表情を見せる。

「恨んでなんて…。だってあの場で刹那さんが撃ってくれなかったら、わたしはライルをこの手で殺してました。
そうなったらもうきっと、わたしは生きてなんていられない。
彼には申し訳ないことをさせてしまったと思ってます…。
でも彼のおかげでライルと分かり合えたのは事実です。だから、良かったんです、これで。
刹那さんは何も、間違ったことはしてません」

そう言って、目を細め笑っていた。
彼女は心から、そう思っているのだろう。
優しい、強い女性だ。
ライルが惹かれた理由が何となくわかった。

でも、ひどく、残酷だ。


「…頼みがあるんだ」
「はい?」
「もしこの先、刹那とまた会うことになっても、それだけは、言ってやらないでくれ」

「え?」と彼女はまた目を丸めた。
俺は、アニューが淹れてくれた紅茶に口を付けた。
温かくて、とても美味しかった。

でもそれがなんだか、彼への裏切りにも思えて、ただただ、苦しかった。




だって、例え世界中の人間が君を許しても、君が君を許してあげないのなら、そんなの、傷を深くするだけだろう?



(なぁ、君はいつになったら救われるのだろう)


10.01.07


―――――――――
二本連続で暗い小話。
アニューさんをまともに書いたのは初めてだ。
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