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ニル刹♀。
リ、リハビリ…。沈。
*****
いとおしい、ちいさなせなか
深く深く息を吸う
ふ、と何の前触れもなしに目が覚める。
眠りに落ちる前には腕の中にあったはずの温もりがないことに気付いて、どこか心許ない感覚がした。
視線を少し動かすと、暗い室内でも人の気配があるのがわかる。
思ったよりすぐ近くにいることに、安堵した。
暗闇に徐々に目が慣れると、彼女の姿が見えてくる。
小さくて細い背中が、こちらに向いていた。
ベッドの端に、膝を折り曲げ座っている。
普段から小さな背中がより一層頼りなく見えた。
置き去りにされたこどもみたいだ、と思った。
身体を捩って刹那の方へ寄ろうとすると、シュ、とシーツが音を立てる。
素肌に触れるシーツの感覚が心地よかった。
暗闇の中で立った音にぴくり、と背中が動いたのが見えた。たぶん彼女は、その前から自分が起きたことなど感づいていたのだろうけれど。
「…せつ?」
寝起きのせいか、口から出た声は思いのほか頼りない。少し掠れすらしていた。
俺の声に、刹那は反応しなかった。おそらく、聞こえてはいるのだろうが。
もう一度呼びかけようとしたが、それは口を開いただけで終わった。
「自分で言うのもなんだが」
「…うん?」
「俺はたぶん、アンタがいなくても生きていくことが出来る」
刹那の声は、その小さな背中とは裏腹に、はっきりとしたものだった。
顔は、見えなかった。
暗かったし、俺が面倒がって、起き上がろうとしなかったせいもあった。
言葉の真意は読めなかった。
元々発言が突拍子もないのには慣れていたけれど。
でも少し…いや、だいぶ、胸が軋んだのは、否定しない。
「…うん、そうだな」
けれど、刹那の言葉は肯定した。
だって、それはおそらく、紛れもない事実だからだ。
戦場で生きる自分達には明日の保障はない。
刹那がそれを一番良く知っている。
そして彼女は、それを受け入れるだけの強さを持っている。
だから例えば明日、俺が敵のMSにやられることになったとしても、彼女は間違いなく、その次の日も、そのまた次の日も、これまでと同じように呼吸をするのだろう。
「だが」
短く発せられた言葉に、顔を上げる。
俯かせた彼女の顔が、ほんの少し寂しそうに見えたのは、俺がそう望んでいるからかもしれない。
ひどい大人だ。
「たぶん上手く、息が出来なくなるんだろうと、思う」
そう言うと、まるで自分の発言に耳を塞ぐみたいに、折り曲げた膝に顔を埋めていた。
俺は、胸がくすぐったくて、どうにかなりそうだった。
彼女の強さの中に垣間見た弱さを、すくい上げるみたいに、抱き締めたくなった。
アンタの隣は、息をするのが楽だ
刹那がぽつり、とまるで独り言みたいに言う。
そっくりそのまま、その言葉を返したくなった。
深く深く、君の隣で息を吸う。
透き通った空気が、身体の中に染み渡るような感覚がするんだ。
10.12.13
―――――――――
書き終わってから、予想外の甘さに自分で戸惑う。。。←
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