正義と悪と迷子 2010/12/30_Thu_14:58

劇場版終了後で、ニル→刹。
ニールさんの後悔。
だいぶ悲観的。

ゆん先生の「楽園TV」設定です。

帰り道を知らない迷子
帰る場所を探さない彷徨い子



正義と悪と迷子




世界はいくつもの問いに溢れかえっている

その問いに答えを出すのは人だ
けれど、一つの問いの答えが一つとは限らない
誰かがある問いに対して「YES」という答えを付けたとする
けれど別の誰かは「NO」と付ける

どちらも正しい
どちらも間違っている

それは価値観からなる差異だ

誰かにとっては正しくても、別の誰かにとってはそれは間違い
十の人間がいれば十の答えがある
別に、そのこと自体は決して間違いではない
むしろそうでなくては世界は回らない

問題なのは、自分が正しいと、思い込んでしまうこと
自分の導き出した答えが絶対に間違ってないと言い張り、他人を受け容れないこと

自分が「正しい」と思ってはいけない
自分が「正義」だと思い込んではいけない

その瞬間が、もう争いの火種となり、その影でいくつもの血が流れてしまうからだ
「正義」は、いとも簡単に「悪」に摩り替わってしまう

けれども、これもある種の、人間における真実
人が人である限り、きっと避けることの出来ないこと
だってそうでなければ、西暦が2300年も経った今でも戦争が終わらない理由が見つからない


でもその真実を、彼は「NO」と言いたかったのだ

真っ直ぐに、まるで射抜くように前を見据える
自分の成すべきことを
あるべき世界を

彼は、なりたかったのだ
「自分」ではない「自分」に
世界を変え、一つにする存在に


でもそれを目指すあまり、後ろを振り返ることを忘れ、自分の帰り道を見失ってしまった




なぁ、あんまり遠くに行くなよ
誰もお前のこと見つけられないだろ？
探したくても、探せなくなっちゃうだろ？
独りで何でも抱え込んで、叱りつけてやりたいのに、それが出来なくなる
だからあんまり、遠くに行くなよ

なんでも、独りでやろうとするなよ


おかしいな
お前が変わってくれて、いいことのはずなのに
変われといった自分の言葉をきちんと胸に刻んでくれて、嬉しいはずなのに

どうしてだろう
あんな風に優しく笑うお前を見ると、どうしようもなくかなしくなるんだ


皆お前を大事に思ってるのに、お前がお前を大事にしないから
だから、帰り道を見失ってどこにも行けなくなってる

なぁ、そんな未来、誰も望んでなんかないんだ






誰もが聞いたら、きっと馬鹿だと罵るだろう

今さら、あの時死んだことを後悔している

悟ったように宇宙を漂い、ただ地球で生きる片割れの幸せを願った
それを、ひどく悔やんでいる

どうして、伸ばしてきたお前の手を取らなかったのだろう
がむしゃらにまで、生きることを選ぼうとしなかったのだろう

そうしたら、お前がたった独りで色んなものを抱え込まなくて済んだのに


ライルの想い人を撃っても
ただ一人の革新者になっても

せめて傍にいられたら、きっとたった独りで遠い遠い宇宙の彼方になんて、行かせなかった
たった独りで全てを背負わせる必要なんてなかった

俺の存在が重く圧し掛かるなんてこと、なかった



こんなトコロにいては、お前をただ見て、想うことしか出来ない
お前の帰り道を示してやることなんか出来やしない
ただの足枷にしかすぎない




前を見るばかりで帰り道を考えない迷子
誰も手の届かない遠い彼方へ行った彷徨い子



世界は平和だよ、刹那
お前が、たった独りで遠い遠い宇宙の彼方に飛んで行ったから
お前が世界に、「NO」を突き付けたから




なぁ刹那
今、幸せか？

お前にまた会えたら、言いたいことがあるんだ





―――――ごめんな、刹那







こんな画面越しじゃ、お前のこと抱き締められないよ




（お前が俺と世界の犠牲になってしまうくらいなら、俺は這ってでも生き抜いたのに）



10.12.30


――――――
実際こんな後ろ向きな感じではないのだろうけれど
せっちゃんは、迷子だとも思った。そんな自分勝手な文章。